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天羽間ソラノ
天羽間ソラノ 『バニヤンの木陰で』 ヴァディ・ラトナー:著 市川恵理:訳      河出書房新社 BD:坂川事務所 お知らせ

『バニヤンの木陰で』 ヴァディ・ラトナー:著 市川恵理:訳      河出書房新社 BD:坂川事務所

《訳者あとがき》より  登場人物もそれぞれに印象深い。何と言っても心に残るのは、ラーミの父であろう。その気高い人柄と行為、娘への深い愛情、現実世界の軛を超えて人の精神を飛翔させる想像力と言葉の力への強い信頼。「まわりにどれほど醜いものがはびこり、破壊が荒れ狂うのを目にしようと」、自分の中に、すべての人の中に、美の片鱗を、聖なるものを見出してほしいとラーミに望み、物語を話して聞かせたのは、何にもとらわれることがないように、翼をあげるためだと彼は語る。家族を救うために早くにみずからを犠牲にしてしまうが、彼の愛情と言葉がなければ、ラーミは生きのびることができなかったであろうし、作者が長じてこのような小説を書くこともなかったであろう。作者自身、あとがきの中で、父の思い出に声を与えたいという強い願いからこの作品が生まれたと語っており、父親への深い愛情と鎮魂の想いが作中に脈打っている。それと並んで、愛する夫と幼子を失い、気が狂うほどうちひしがれながらも、ラーミを必死に守り、生きぬくために闘いつづけたラーミの母の強さ、たくましさもやはり忘れがたい印象を残す。住み慣れたわが家を追われ、家族や親戚を次々に奪われ、子ども時代すら奪われて、過酷を極めた運命を耐え忍ぶラーミの物語は、読んでいて胸が痛むが、同時に、全てを奪われつつもなお懸命に生きようとするその姿には、読者に生きる希望や勇気を与える力がある。人間の恐ろしさと美しさの極限の形を深いレベルで見事に描きあげた、読み応えのある傑作であり、多くの方に読んでいただければ幸いである。【No 8】

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