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イラストレーターのお仕事帳

イラストレーターのお仕事帳 ~No.005 板倉アユミさん~

イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載を毎月お届け。クライアントワークにまつわる5つの質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第5回でお話をうかがったのは、板倉アユミさんです。

 

┃クライアントワークを受注するために普段していること

私の場合は作品をどうやったら多くの人に見てもらえるかということを考えながら、SNSでの発信を続けています。

専門学校卒業後からイラストレーターとして活動するなかで、最初はシンプルに、描いた絵をそのままSNSに投稿していましたが、XとInstagramを中心に続けていくうちに少しずつ反応をもらえるようになり、それをきっかけに出版社やデザイナーの方に声をかけていただく機会も増えていきました。

Instagramは投稿するだけ見てくれる人が増える実感があるので、とにかくこまめに載せることを意識しています。特に、漫画のように文字が入っている方が伸びやすい傾向があるなと感じますね。文字入りのものとそうでないものを投稿することで閲覧数やフォロワーさんを増やしつつどちらも見てもらえるようにと心がけています。そのほかには、画面を見た時に、バラバラな印象にならないようにテイストを統一するよう気をつけています。

一方でXは、シンプルに可愛いものやクスッとするものなど、感覚的に楽しんでもらえるイラストレーションの反応が良いと感じます。そういったSNSでの傾向を意識しつつ、自分の描きたいと思えるものを大切に、試行錯誤しながら投稿しています。

こうしたSNSでの発信は、仕事につながるだけでなく、自分のモチベーションになっている面もあります。イラストレーターとして活動するようになった時期に、誰にも見てもらえず、評価されていなかったら、おそらく途中で絵を描くのをやめてしまっていたかもしれません。ありがたいことに応援してくださる方がいたので、頑張っていままで描き続けることができました。

もともと、かわいがっていた鶏のコッコを投稿するペットアカウントを持っていて。コッコの絵も時々アップすることがあり、「コッコの飼い主さんはイラストレーターなんだ」と認知されるようになって、鳥好きや動物好きの方のフォロワーが増えていきました。そうしたイラストレーションを描き続ける中で、自分の得意な部分が少しずつ見えてきて、もっと伸ばしていこうと思えるようになりました。

大切に飼っていたコッコのイラストレーション

  

┃ファイルWeb経由で依頼があった印象的なお仕事

『猫の扉 猫ショートショート傑作選』(扶桑社)という書籍の装画のお仕事です。本の表紙はイラストレーターにとって一番憧れのお仕事だと思うんです。自分自身も、本の表紙を見てイラストレーターになりたいと思ったこともあり、本屋さんで自分の絵が並んでいることにずっと憧れていました。専門学生の時からずっとやりたいと思っていたところに初めて来た装画の仕事だったんです。

『猫の扉猫ショートショート傑作選』(扶桑社)装画/2020年/江坂遊 選

内容は猫のショートショートを集めた本で、当初は「SF感のある黄昏時のような少し不安さの残るような……」とイメージの指定があったんです。数案ラフを出した中に、オリジナルで陽だまりの中にいる猫たちをイメージして描いたラフを1枚混ぜて送ったら、それがしっくりくるということで選んでいただけて。それが通ったのがすごくうれしくて、自信にもなったので、一番思い出深いお仕事になっています。

友人から「猫のお腹を嗅ぐと、いいにおいすぎて飛ぶぞ」という話を聞いたことがあって。本のタイトルが『猫の扉』で、扉を開くとさまざまな短編が読めることから、「猫のお腹を嗅げば、いろんな世界に飛ぶんだな」という解釈でできた扉です。

この仕事はファイルWebに登録してすぐのタイミングでいただいたものでした。当時はいまほどSNSも発達しておらず、駆け出しのイラストレーターがなかなか見つけられにくい環境でもあったと思います。そんななかで、ファイルWebには、誰でも登録できるわけではないプロ向けのサイトというイメージがあり、、そこに登録していたことでつながった仕事でもあります。

自分としてもそういった意識で仕事に取り組むようになった時期でもあり、転機となった仕事でもあります。

  

┃クライアントワークの際に心がけていること

クライアントには、私のイラストレーションの雰囲気や色合いを気に入ってご依頼いただくことが多く、「自由に描いてください」と言ってもらえることが多いのですが、自由に任せてもらっているからこそ、仕事の前にはリサーチをするようにしています。

特に雑誌のカットの場合は、過去の号やこれまでどんな方のイラストレーションが使われてきたかをチェックします。雑誌全体の色合いの傾向が分かったり、他の方が描いたものとモチーフや表現がかぶらないように意識できたりするので、そのうえで「じゃあ自分はどう描こうかな」と考えるようにしています。

事前にリサーチしておくことでクライアントがどういう絵を求めているかと自分の描きたいものの重なっている部分が見えやすくなります。そうすると迷いも少なくなって、結果的に作業もスムーズに進むなと感じています。

また、ラフを出す際には、「こういうものも描いてみたので、好みの方を選んでください」という形で、要望に沿った案に加えて、本当に自由に描かせてもらったものを提案をすることもよくあります。

普段描いている絵は、わりとデフォルメが強めなので、依頼をいただいた際には最初にその点を確認するようにしています。デフォルメがある方が表現の幅が広がりますし、多少デッサン的な正確さから外れても、絵として面白くできるところがあると思っています。そのため、クライアントが求めているタッチとの認識にズレが出ないよう、最初の段階ですり合わせることを大切にしています。

 

┃使用している制作ツール

いまはiPadと、CLIP STUDIO PAINT、Adobe Frescoをメインで使っています。CMYKに変換する時は、Macにデータを移してPhotoshopで調整しています。

iPadで描く時に欠かせないのが、画用紙の描き心地を再現するフィルムです。何も貼っていない時とペンの滑り方が全然違うので、必ずストックを確保してあります。

 

┃今後してみたいお仕事

たくさんやってみたいことはありますが、特に鳥に関するイラストの仕事には興味があります。昔から鳥が好きで、実際に飼育もしてきたので、身近で感じてきた魅力や可愛さを、イラストをとおして伝えられたらいいなと思っています。

もう1つ、挑戦してみたいのがカプセルトイの仕事です。自分自身が子供の頃からカプセルトイが好きなので、いつかそういう形のお仕事にも関われたらうれしいですね。

声に出して伝えていくことで、思いがけないところからご縁がつながることも多いと感じています。なので、「こういうことをやってみたい人がいるんだな」と、どこかで覚えてもらえたらうれしいです。

  

 


板倉アユミ(ITAKURA Ayumi)

バンタンデザイン研究所イラストレーション科卒業。千葉在住のイラストレーター。

食べ物や動物、可愛らしいイラストを描くのを得意とする。

Instagramを中心に、イラストやエッセイ漫画も掲載している。

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