絵を描くための資料にも著作権がある-02|【Web連載】イラストレーターと著作権 第7回


【Web連載】イラストレーターと著作権 第7回

本連載は、イラストレーターやイラストレーターといっしょに仕事をする方々のために、著作権の基礎知識から運用上の注意点まで、主にQ&A方式でわかりやすく解説していきます。

一般社団法人東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)編
アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)
イラストレーション:中村 隆

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絵を描くための資料にも著作権がある-02

イラストレーターと著作権-07-01

Q:インターネット上の画像を資料にして絵を描く時の注意点を教えてください。

A:著作権侵害に注意。ほぼそのままの形で使用することは避けましょう。

別項でも触れましたが、インターネットで公開されているあらゆる画像(写真、絵)は誰かの著作物であり、それぞれ著作権があります。それをそのまま無断で流用すれば著作権侵害になります。ネットで探した画像を絵を描くための資料にすることは今や当たり前のこととして行われていますが、これも厳密にいえば無断で行なうと著作権侵害に該当するケースがあります。とはいえ、著作権侵害は権利者が訴えて初めて成立する親告罪なので、元資料が特定されない利用の範囲にとどめたり、「別物」になるよう充分なアレンジを加えることで回避することが可能です。

厄介なのは、著作権者が問題にしていなくても「善意の第三者」が類似性や盗用を指摘して来ることがあり、それがネットで「炎上」する事件がたびたび起きています。著作権法あるいは判例に照らして問題のない範囲であってもこうしたクレームからトラブルに巻き込まれることがあり、少なくとも写真をそのままトレースしただけとか、人物の衣装や髪型やポーズが同じといった、依拠性が明らかな利用の仕方は避けるべきです。
何らか他者の著作物を参考にしても、ちゃんと「自分の絵」になっていることが肝要です。

著作権の一部を放棄あるいは不行使として、著作権フリー素材の形で有償・無償で提供されている画像もあります。提供者ごとに利用規約・ルールが設定されているので、それに則って利用しましょう。中には改変や翻案を禁じているものもあり、「イラスト化」は広義の改変・翻案に該当します。そもそも、絵に描き起こす想定がされてないこともあり、この場合は提供者に問い合わせるしかありません。


Q:写真のトレースは「複製」には当たらないのでしょうか。

A:広義の「複製」にあたります。

トレースでなくても、写真に依拠して描かれた水彩の風景画が「翻案権」の侵害と判断された判例があります。(東京地裁平成20年3月13日判決・八坂神社祇園祭ポスター事件)


Q:有名な映画のワンシーンを絵に描いて発表するのは著作権侵害になりますか。許可が必要だとすればどこに許可を取ればいいでしょうか。

A:無断で映画のワンシーンをイラストレーションにして発表すれば、映画の著作権侵害になります。

「映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の制作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」(29条)とされ、多くのケースでは、監督等ではなく、製作会社が著作権を有しています。したがって、映画製作会社の許諾が必要になることが多いでしょう。ただし、保護期間が経過して著作権が切れた作品については、もちろん許諾を得る必要はありません。


東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)Webサイト

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アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)