著作権侵害と訴訟|【Web連載】イラストレーターと著作権 第12回
【Web連載】イラストレーターと著作権 第12回
本連載は、イラストレーターやイラストレーターといっしょに仕事をする方々のために、著作権の基礎知識から運用上の注意点まで、主にQ&A方式でわかりやすく解説していきます。
一般社団法人東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)編
アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)
イラストレーション:中村 隆
著作権侵害と訴訟
Q:著作権を侵害されていると思った時に取るべき対策は。
A:まず証拠の保全・確保、差止め、 損害賠償請求(内容証明付き郵便)、著作権を侵害した媒体の発行数等の情報開示請求、そして警察への告訴です。
相手が侵害を認めて差止めや損害賠償などの要求に応じれば、本裁判には至らず、示談の形で収束させることも可能です。
Q:自分の絵にタッチや人物表現がそっくりなイラストを見つけました。著作権侵害で訴えることはできますか。
A:訴訟を起こすことは可能ですが、単に似ているだけで盗用や著作権侵害が認められることはまずありません。
単に画風や絵柄が似ているだけでは著作権侵害が認められることはほとんどないと認識しておく方が賢明です。タッチや画風、表現された人物やモノが似ている・似ていないの判断は主観的な要素が大きく、裁判官は絵の専門家ではないので、そこに踏み込んで判断をすることはまずありません。同じ画材や表現技法を使って似たような設定で人物などを描けば、ある程度似てしまうのは当然だという認識がされています。
特定の作品について、構図や背景要素、アイデアなど、具体的に類似点を指摘できる場合は、同一性、依拠性が高いと判断されれば著作権侵害が認められることがあります。ただし、構図やアイデアがあまりにも普遍的でありふれている場合は、侵害と認められないことが多いです。
Q:著作権者または第三者から著作権侵害を指摘された場合、まずどうすればよいでしょうか。
A:事実の調査と専門家への相談、そして誠実に対応することが重要です。
まずは事を荒立てないように慎重に動くことが必要でしょう。本人にその意図がなく、かつ侵害に当たらないとの専門家の判断があった場合も、きちんとその経緯等を説明することを行いましょう。
Q:著作権侵害で訴訟を起こす時の流れやポイントについて教えてください。
A:まずは警告の文書を内容証明付きで送り、対応を求めましょう。相手が争う姿勢を見せたら裁判手続きに入ります。
著作権侵害で訴える第一の目的は、その侵害行為をやめさせることです。裁判になると手続きにも手間がかかり、多くの時間と費用を費やすことになるので、本裁判に至らずに解決できるのが理想です。法律知識や事務手続きを含め、個人の手には負えないことが多いので、最初に弁護士などに相談する方が賢明でしょう。
いきなり訴訟を起こすのではなく、まずは内容証明郵便で著作権侵害を受けている案件について通告する文書を送り、公開や販売の中止、回収などの対応を求めましょう。内容証明郵便とは、誰が誰宛に、いつ、どんな内容の手紙を出したのかを郵便事業者が証明した郵便で、法的効果が発生する意思表示や通知を行う場合に用いられ、弁護士名で送ることが多いです。
相手も無用な争いは避けたいはずですから、多くの場合、自分の非を認めて謝罪して来たり、示談を求めて来ます。そうなれば、あとは示談交渉となります。相手が応じなければいよいよ訴訟手続き、裁判になりますが、原告は侵害を受けている証拠物を提出し、絵柄の一部または全部が盗用されたといった証明を行う義務があります。
また損害賠償を求める場合は、あらかじめ自身が受けた経済的損害を算出しておく必要もあります。相手が著作権侵害を認めず裁判を受けて立つ場合、相手もまた名誉毀損などで反訴して来る可能性が高いことは覚悟しておく必要があります。
Q:法人と個人とで賠償金額に差が出るのですか。
A:ケースバイケースですが、企業が組織的に悪質な侵害を行なった場合は高額になると考えられます。
現行法では、刑事罰の罰金について、個人は1000万円以下ですが(119条1項1号)、法人は3億円以下と(124条1項1号)、個人と法人で差を設けています。
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アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)