Adobe Stockの魅力を日本人初のプレミアコントリビューターに聞く


ストックフォトと呼ばれるサービスをご存知だろうか。簡単に説明すると、コントリビューター(*)が投稿した作品を利用者に公開し、利用者が目的にあった画像を見つけて使用すると、一定のギャランティがコントリビューターに支払われるサービスのことだ。

現在、アドビ社が注力しているのが同社のストックフォトサービス「Adobe Stock」。今回は日本人イラストレーターとして、初めてAdobe Stockのプレミアムコレクション(*)に作品を提供しているミヤザキコウヘイさんに、Adobe Stockの利便性や魅力についてお聞きする。なお、途中登録手続きなどについてはアドビ社の吉本龍生さんに解説して頂いた。

https://stock.adobe.com/jp/

Adobe Stock公式サイトトップページ

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ミヤザキコウヘイ
イラストレーター。大阪府出身、埼玉県在住。創造社デザイン専門学校、セツ・モードセミナー卒業。実践装画塾3期修了。2009年ターナーアクリルアワード入選、THE CHOICE祖父江慎さんの審査、アルビレオさんの審査入選など受賞多数。
http://miyazakikouhei.com/


【用語解説】
*コントリビューター…Adobe Stockへの作品投稿者のこと。現在Adobe Stockでは、一般のコントリビューターとプレミアムコレクションへのコントリビューター(プレミアコントリビューター)の2種類が存在し、通常は一般のコントリビューターでの登録となる。

*プレミアムコレクション…Adobe Stockのコンテンツチームにより非常な高いクオリティとメッセージ性のある作品と判断された作品群のこと。アドビ社からオファーされ、契約することでプレミアムコレクションへの投稿が可能となる。ミヤザキさんは日本人イラストレーターとして初のプレミアコントリビューター。

*Behance…アドビ社が運営するクリエイター、デザイナーのためのポートフォリオサイト。写真やイラストレーション、ビデオなど、多くの作品がアップロードされている。Adobe IDがあれば誰でも簡単にログインすることが出来る。
https://www.behance.net/


使う立場から見たストックフォト

───ミヤザキさんはAdobe Stockに作品を提供されていますが、もともとストックフォトサービスはご存知だったんですか?

ミヤザキコウヘイ(以下ミヤザキ):僕は今はフリーのイラストレーターですけど、以前はデザイン事務所に長く勤めていたので、その頃に仕事でよく使っていました。だから親近感はありましたね。

───その時は写真とイラストレーションでは、どちらを使うことが多かったのでしょうか?

ミヤザキ:どちらかと言えば写真が多いですけど、イラストレーションも使っていましたよ。レイアウトを作る際に、ストックフォトを使うとすごく便利なんですよ。使いたい図版に関連するキーワードで検索出来、それをすぐに使えるので。雑誌のデザインの現場は非常に多忙なので、とりあえず仮データでレイアウトを作ることも多いんです。

───ストックフォトに関してはどうお考えですか?

ミヤザキ:業界的に「どうなんだろう?」という意見は正直あると思います。見え方とか、人によっては安売りしてるって感じたりもするし。でも、僕はデザイナー時代に今話したような経験がありましたし、仮でレイアウトしていた作品をそのまま使うことに決まるというのを実際に見てきたので、結構ポジティブに考えています。

───そのまま仮の作品を本番で使うこともあるんですね。

ミヤザキ:そうですね。「もうこの作品でいいじゃん」っていう場合はあります。「この人に頼もうよ」みたいな感じで決まったりすることも何度も見てきたので、ホームページにアップしているだけなら、Adobe Stockみたいなところに投稿するほうが仕事にも繋がっていくんじゃないかっていうのが僕の考えですね。自分に限って言えば、もちろん売り上げも欲しいですけど、世界中に拡散していくことにより期待しています。アドビのアプリケーションを使っている人は世界中にいますから。

アドビが提供するサービスだからこそのメリット

───Adobe Stockにコントリビューターとして登録するきっかけは、どういうことだったんですか?

ミヤザキ:Adobe Stockの担当者の方からオファーをいただいたことがきっかけですね。ただ以前からアドビのアプリケーションを使っていたので、Adobe Stockのことは知っていました。アプリケーション上に、すごく便利な検索窓が出ているんですよ。デザイナー時代にこれはすごくいいなぁとずっと思っていました。

Photoshopのウィンドウ。右側にAdobe Stockの検索窓がある

Photoshopのウィンドウ。右側にAdobe Stockの検索窓がある

 

───やはりアドビが提供しているストックフォトのサービスだということは、参加する上で重要でしたか?

ミヤザキ:それは絶対ありますね。PhotoshopやIllustratorを提供している会社というブランド力もあると思うし、やっぱりワールドワイドな企業なので、世界への拡散力というのには期待しますよね。僕はBehance(*)も使っているんですけど、去年ぐらいからダイレクトメールが来たりっていうことがあって、ちょうど海外の仕事に興味を持ってる時期でもあったので、すごくありがたいお話でした。

───検索窓の便利さについてのお話がありましたが、他にもアドビが提供するサービスだからこそのメリットはありますか?

ミヤザキ:忙しい現場だとストックフォトを利用する頻度がすごく高いんです。そんな現場で、検索して見つけた画像をそのままInDesignやPhotoshopなどのアプリケーションに簡単に持ってこられるのはすごい利便性だと思います。

───それはデザイナーをやってらっしゃったからこその視点ですね。

ミヤザキ:そうですね。雑誌のデザインはとにかくこなしてこなしての世界ですから。デザイナーのときはInDesign、Illustrator、Photoshopを使ってましたけど、図版が必要な時にAdobe Stockでキーワード検索するとそれに見合った絵とか写真が出てくる。しかも、そこで見つけた作品を全部使えるってすごいですよ。ラフを作っている段階までは無料ですし、実際に高解像度の図版にする段階で初めて課金されるシステムも良心的だと思います。しかもこの低解像度から高解像度に変換する作業も1発で完結するんですよ。(低解像度の透かし入り画像に関しては、無料で利用することが出来、高解像度版に差し替えた段階で、初めて課金となる。ただし、透かし入り画像の利用は90日以内と期限が決まっているので、それまでに利用する・しないの判断が必要。)

自動でキーワードが作成されるためタグ付けも簡単

Adobe Senseiを活用した、自動タグ付け機能がキーワードの提案をしてくれる

 

作品の投稿はとても簡単

───Adobe Stockに登録してからどのくらいですか?

ミヤザキ:まだ2ヵ月くらいなので最近ですね。

───アップしてる作品のセレクトというのはミヤザキさん自身がされてるんですか? それともこういう作品をアップして下さいとお願いされるんですか?

ミヤザキ:僕はアクリル以外に3つのタッチで描くんですけど、担当者にアクリル作品はぜひ載せたいと言ってもらったので、とりあえず今はアクリル作品だけにしています。(*コントリビューターは自ら作品を投稿し、審査に通れば作品がアップされるが、ミヤザキさんはプレミアコントリビューターなので、現在はAdobe Stockの担当者が投稿作品についてアドバイスしている)。

───ミヤザキさんがイラストレーターとしては日本人初のプレミアコントリビューターなんですよね?

ミヤザキ:そうみたいなんです。マジっすか? って思いますよね(笑)。なんで僕だったんだろうという気持ちもありますけど、最初って言うのはやっぱりうれしいです。

───作品の投稿は簡単なのでしょうか?

ミヤザキ:とっても簡単ですよ。画像をアップロードして承認申請すると、3日か4日くらいで「これはOK、これはNG」ってアドビから連絡が来ます。個人的な印象ですけど、審査は通りやすいと思います。ただ、企業名とか固有名詞が出てたり、有名人が描かれていたりするとやっぱりダメなんで、そこは注意が必要です。画像の投稿はドラッグ&ドロップで一気に出来ます。それとタグ付けするキーワードも勝手に見つけてくれるので、不要なものだけ外してアップしています。このシステムにはすごく感動しました。「自分で考える必要もないし、入力する必要もない!」って(笑)。

登録OKだったミヤザキさんの作品(左)とメーカー名が入っていたためNGになった作品(右)

登録OKだったミヤザキさんの作品(左)とメーカー名が入っていたためNGになった作品(右)

 

コントリビューター登録に必要なのは身分証だけ

───実際コントリビューターになるための手続きはどういったものになるのでしょうか? やはり資料など提出しなければならないのでしょうか?

ミヤザキ:僕はプレミアムコレクションでの登録だったため、コントリビューターの方がどのように登録するかまでは把握していないので、そのあたりは吉本さんお願い出来ますか?

吉本:では、ここからは私が説明しますね。コントリビューターの方の登録についてですが、必要な書類はパスポートや免許証など、写真が付いている身分証明書だけです(この身分証明書は登録情報と姓名が一致しているものが必要)。では、登録方法を簡単に説明していきます。

まずはAdobe Stockのコントリビューター向け登録サイト(https://adobe.ly/2zwJsIF/)にアクセスして下さい。登録サイトの表記はもちろん日本語なのでそこは安心して下さい(笑)。そこでAdobe IDを作成して頂きます。IDを作成して頂いたら、ログインします。その後、利用条件やプライバシーポリシーに同意して頂くと、すぐに作品のアップが可能です。
初めて作品を審査に回す際に、身分証明書の提出が必要になります。提出方法は、画像データをアップロードして頂くことになりますので、事前に携帯のカメラなどで撮影しておくとスムーズです。
報酬については、画像の場合、販売価格の33%、ビデオは35%をお支払いします。ただ1点だけ注意して頂きたいのは、お支払いの手続きは報酬が50ドルを超えた時点から可能だということです。

Adobe Stockのコントリビューター登録サイト

Adobe Stockのコントリビューター登録サイト


 
───なるほど。身分証明書を提出する前でも、お試しで画像のアップなどは出来るんですね。

吉本:はい。可能です。ただAdobe IDだけは必要となりますので、その点だけは注意して下さい。それと1点だけ、どうしても英語の表記になってしまう手続きがあります。それは税金に関する書類です。この書類はアメリカの米国国税庁(IRS)に提出するものなので、どうしても英語での表記になってしまいます。この点については、コントリビューター向けにタックスに関してのヘルプページを用意していますので、そちらを参考いただければと思います。

Adobe Stockに登録すれば、Adobe Portfolioも利用可能!

───登録自体は簡単に出来そうですね。そう言えばAdobe StockのコントリビューターはAdobe Portfolioが作れるということも聞きました。

ミヤザキ:あ、それ。僕も最近知りました。でも使っていないんですよ。Behanceとどう差別化したらいいのかって思っていて。

吉本:Adobe Portfolioはご自身のWebサイトのようなイメージで、かなり自由に作品をレイアウトすることが可能なサービスです。Adobe Stockに投稿していない作品ももちろんアップ出来ますし、かなり使い勝手はいいと思います。自分でURLの設定も出来ます。

今まではクリエイティブクラウドのコンプリートプランのメンバーの方が無料で利用可能なサービスだったんですが、クリエイティブクラウドに参加していなくてもAdobe Stockのコントリビューターの方は、2018年10月から使えるようになりました。セルフプロモーションをしていただけるような環境を我々も作っていきたいと考えているので、そのための手段の1つとして活用してもらえればうれしいです。

Adobe Portfolioのトップ画面

Adobe Portfolioのトップ画面


 
ミヤザキ:実は個人的にAdobe Stockの魅力は他にもあって、それは審査なんです。審査に通った作品と通らなかった作品を比べてどこがダメだったのか、自分で分析出来ますし、指針になるんですよね。こういう作品が求められてるんだって、自分の絵を見定めるのにいいなっていうのはすごく感じています。特に迷ってる人とかは、とりあえず登録して、審査にどんどん送ってっていうのがすごくやりがいもあるし、おススメです。1人で黙々と描いてると、どうしても迷ってしまうことがあるので。

僕が強調したいのは、コントリビューターとして作品を登録するデメリットはないということなんです。Adobe Stockで、すぐにたくさんのお金を稼ぐことは難しくても、世界中の人に作品を見てもらえる場でもあるし、それこそ作品が使われればお金も入ってくるわけですから。

色々と話してきましたけど、実際に試してみるのが一番いいと思うので、1度Adobe Stockにアクセスしてみて下さい。投稿は本当に簡単ですよ!

Adobe Stockへの登録はこちら→https://stock.adobe.com/jp/