『イラストレーション』とアパレルブランドのコラボ企画、「ザ・チョイス×merlot」審査レポート


『イラストレーション』誌とアパレルブランド『merlot』が共同で「レトロな自然」をテーマに作品を募集した「ザ・チョイス×merlot」。2018年11月下旬に長崎訓子さんによる審査が、「merlot」の担当者同席の上で行なわれました。今回の応募点数は415点、応募人数は150人。入選作品は、4月に同ブランドより春夏のコレクションとして商品化の上、発売されます。
「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-01

 

ザ・チョイス史上初のパソコン画面での審査

本審査では通常のザ・チョイスとは異なり、チョイス史上初めてパソコンを使って審査をする方法を採用しました。

長崎さんが審査会場に到着するや否やサプライズが。なんとmerlotの担当者Nさんは長崎さんが教鞭をとる女子美術大学で、長崎さんの授業を受けていたことが判明。学生時代の思い出話に花が咲き、審査前の緊張した雰囲気が一気に和やかになりました。

思い出話も一段落したところで、いよいよ審査スタート。

ウェブサイトにアップロードされた応募作品を1点ずつチェックしながら、応募作品全体のレベルを確認していきます。最初にすべての応募作品に目を通すのは、審査する際の基準を作るため。入選作品の点数が決まっているので、この作業が大切です。

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-02

1次審査ではサクサクと審査が進行し、26名の作品が2次審査へと進むこととなりました。

「複数点を応募した人が結構残りましたね。こういうコンペの審査では応募作品が1点だと判断が難しいから、不利になってしまうかもしれません」と長崎さん。

続いて残った26名の作品をピックアップし、2次審査を開始します。いくつか最終選考に選ぶかどうか悩んだ作品が出てきたことから、参考として各応募者が応募の際に提出したコメントを読んでみることに。

「みなさん意外と真面目にコメントを書いているんですね」(長崎さん)

各作家の作品に対する想いがコメントからも伝わってきます。

最終選考では出力した状態でもチェック

入選候補の目星をつけた段階で作品を紙に出力し机に並べ、全体的な印象もチェックすることになりました。商品化の際のことも考えつつ、入選作品のバランスを考えて選んでいきます。

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-03

この段階では「merlot」のデザイナーさんから商品化する際に問題が発生する可能性がないかアドバイスや、作品毎にどのような商品にするのが最適かなどについての提案もありました。

一部、春夏の商品になるということを忘れて、(審査の時期の)冬っぽいモチーフを描いてしまっている応募作品があり、長崎さんから「もったいない!」という発言が飛び出す場面も。

アパレルのように季節感が特に重要な商品は、その点もきちんと考えて応募する必要があります。

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-04

merlotさんからのアドバイスも聞きつつ、長崎さんが最終的に5名を選出しました。

入選者は下記の5名です。

【入選者】

つきみのさん

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-つきみの

 

小林ランさん

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-小林ラン

 

おおたはるかさん

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-おおたはるか

 

長田哲/Satoshi Osadaさん

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-satoshi osada1

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-satoshi osada2

 

しみずさとかさん

「ザ・チョイス」×「merlot」コラボ審査レポート-しみずさとか

 
この審査を通じて長崎さんからコメントを頂いています。

【長崎さんからのコメント】

今回はクライアントが存在し、はっきりとした使用目的があるため、絵の魅力だけでの判断ではなく、用途に合っているか、クライアントのイメージと大きくかけ離れてはいないか、といったことも同時に踏まえて選出しました。

また、ウェブサイト上での公募ということでモニターを見ながらの審査になり、これは少々戸惑いました。いずれは印刷物になるということを考えれば、データでの判断は決して間違えてはいない方法だと思いましたが、『審査』となると作品が持つバックグラウンドや息づかいのようなものがモニターだけだと伝わりづらく、痒いところに手が届かない感じでした。データ化については原画のスキャンの状態が悪かったりアプリケーションに頼りすぎのものも目立ちました。結果、やりたいことがシンプルに伝わってくるような作品が残った気がします。

イラストレーションをアパレルに落とし込むことは、総柄でのパターン化なのか一枚絵でのプリントなのかではスタート地点が全く違います。今回、パターン化前提での応募作品もたくさんありましたが、イラストレーションのコンペだということを考えると、やはり一枚の絵としての面白さは譲れないところがあり悩ましかったです。そういった意味では『サボテン農場の朝』はバランスが取れていたかなと思いました。他の作品についてはまた後日、本誌にて…。(長崎)


入選作品がどのように商品に落とし込まれたのか、そしてその商品を見た入選者たちはどのように感じたのか。

詳細は4月18日発売の『イラストレーション222号』にて紹介します。