イラストレーション専門ギャラリー「ギャルリー ル・モンド」、グランドオープンへ


イラストレーション専門ギャラリー「ギャルリー ル・モンド(L’illustre Galerie LE MONDE)」が3月17日にグランドオープンを迎える。すでに今年の1月からプレオープン企画として展示を行なっているが、オーストラリア出身のイラストレーター、グレース・リーさんの個展を皮切りに本格始動する。ギャラリーの運営ポリシーや今後の方向性などを、オーナーである田嶋吉信さんに聞いた。

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タロットの大アルカナは、0番の「道化師」に始まり、21番の「世界」で終わる。創造的で独創的、常に変化に対してオープンマインドな「道化師」が、異なる世界の結び目となりながら、魂の成長過程を経て「世界」に至る。この「道化師」こそイラストレーターに似ているのではないかと田嶋さんは考えている。そんな田嶋さんの思いから、この新しいギャラリーは「世界」すなわち「ル・モンド」と名付けられることになった。

田嶋さんは、ロンドンの大学で主にコマーシャルアートを学んだ後、フリーランスのイラストレーター、グラフィックデザイナーとして活躍する一方で、アーティストエージェントBUILDINGでのコーディネーターとしてのキャリアと独自の人脈を活かし、現在は都内在住の外国人イラストレーターのコーディネートを行なっている。グランドオープンで個展を行なうグレース・リーさんもそのひとりだ。田嶋さん自身が「道化師」つまり世界の結び目になっている。


オープンからしばらくの間、ファッションやビューティを得意とするイラストの展示が続く。これはオープン前から展示のラインナップを意識して声をかけてきた結果だという。
「日本のコマーシャルアートに、ファッションイラストレーションを定着させたい」と田嶋さんは言う。日本ではファッションやビューティの広告、雑誌企画のビジュアルに起用されるのは、どうしても写真が中心。もっとADや編集者に、イラストレーションの良さを訴えたい。そのことを戦略的にヴィジュアライズする場が「ギャルリー ル・モンド」というわけだ。

新しいギャラリーは、オープン当初にどんな展示を行なうかである程度カラーが決まってくるとも言われるが、「ファッションやビューティ系のイラストレーションに力を入れているギャラリー」というイメージを敢えて発信するのも田嶋さんの狙いだ。ファッション系のイラストレーターはあまりギャラリーでの個展をやらない傾向があるが、そんなイラストレーターが自分の作品をアピールできるリアルな場を作りたかったと田嶋さんは語る。オリジナル作品で勝負できる個展こそ、これまでにはなかった新たな仕事の領域を拡張できる場だという確信があるからだ。

「ル・モンド」では、イラストレーションギャラリーであることにこだわりを持ちながらも、他ジャンルとのコラボ展示も積極的に行なっていく考えだ。従来、ファッションと縁遠いと思われていたジャンルも、作品を置く「場」によってはフレッシュに見えたりする。それこそ「場の作用」であり、田嶋さんが得意とする「コーディネートの妙」でもある。
そうしたコラボレーションの一環として、展示のテーマや作家のパーソナリティに応じて、さまざまなワークショップも積極的に開催していくという。それは異なる業種、異なるジャンル、異なる世代の人たちがコミュニケーションをはかり、創発を起こしていく場を用意するということでもある。

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田嶋さんはその仕事柄、雑誌などの編集者やアートディレクターにイラストレーターの紹介を頼まれることが多いが、発注側の安全志向からか、なかなか若いイラストレーターの仕事が決まることが少ないという。しかしギャラリーというリアルの「場」をもったことで、発注側の人たちに直に作品を見せ、その才能に接してもらやすくなる。たとえば、第一線で活躍中の作家と無名の新人をフィーチャーした企画展などを行なうことで、若手をベテランと同じ土俵に引き上げることもできるはずだ。そのように若手が仕事を獲得できる機会を増やすためにもこの空間を活用していきたいと田嶋さんは意気込みをみせた。

また「ル・モンド」では、イラストレーション作品の販売にも力を入れたいという。日本には部屋に絵を飾るという習慣がまだまだ根付いていない。どうしたら絵を飾ってくれるか。ギャラリーのディスプレイで、部屋に絵を飾る見本を見せるような工夫もしてみたいと語ってくれた。

大橋美由紀 個展 Drawing Room より

大橋美由紀 個展 Drawing Room より

プレオープン段階から滑り出しは順調のようだ。明治神宮前駅から徒歩1分という立地の良さも手伝って、特に休日には買い物帰りの一般の方の来廊を含めてかなり賑わっている。そして今後の展示についても、この年末まで、6週ほどを除いてすでに予定が決まっているという。
最後に田嶋さんは、独自の人脈を活かして「ユニークなギャラリーであり続けたい」と笑った。イラストレーションと他のジャンル、ベテランと若手の間にどんな「結び目」を作っていくのか。「ル・モンド」のこれからに期待したい。

【取材・文責:イラストレーションファイルWeb】

オーナーの田嶋吉信さん(右) この日展示を行なっていたロンドン留学時代からの友人、 切り絵アーティストの杉本佳世(liyliesang)さんとともに。

オーナーの田嶋吉信さん(右)
この日展示を行なっていたロンドン留学時代からの友人、
切り絵アーティストの杉本佳世(liyliesang)さんとともに。

 

GRAND OPENING EXHIBITION
SUPER EVERYDAY ORDINARY
DRAWING BY GRACE LEE
2015年3月17日(火)~3月29日(日)

L’illustre Galerie LE MONDE
営業時間:12:00~20:00(最終日は17時まで)
定休日:月曜日
150-0001 東京都渋谷区神宮前6-32-5 ドルミ原宿201
電話&ファクス:03 6433 5699
hello@galerielemonde.com
http://www.galerielemonde.com/
東京メトロ千代田線・副都心線 明治神宮前駅 7番出口より徒歩1分