ホルベイン×ザ・チョイス「クロッキーメモを作る!」製品化レポート
【ザ・チョイス特別篇スペシャルレポート】

画材ブランド「ホルベイン」とのコラボレーションによるザ・チョイス特別篇「クロッキーメモを作る!」。
「イラストレーション」205号で、審査員の宇野亞喜良さん、ヒグチユウコさんによる審査結果を発表しましたが、年が明けて製品化がスタート。デザインから入稿、校正までのプロセスをご紹介します。完成した製品は4月18日発売の206号に掲載いたします。
審査結果はこちら http://www.genkosha.co.jp/il/choice/1738.html |
デザイン打ち合わせ
2015年1月21日、宇野亞喜良さんの事務所にてホルベイン×ザ・チョイス「クロッキーメモを作る!」の製品化打ち合わせが行われました。そう、宇野さんには作品審査に続いて、商品化のためのアートディレクションをお願いすることになったのです。

宇野亞喜良さんの事務所にて、宇野さんとホルベインのスタッフのみなさんとの打ち合わせ
まずはホルベインのスタッフの方から、商品のデザインにあたってのいくつかの決まりごとの説明がありました。表紙(表1)に「CROQUIS MEMO」のロゴが入り、裏面(表4)にはバーコードや商品番号などが入ります。バーコードは8製品共通で、品番だけが個別になります。
表紙には商品ロゴと一緒に、作家のクレジットも入れることにしました。裏面の商品情報のところには、「ホルベイン×ザ・チョイス」のコラボを示す表記を入れること、表紙の紙は地色があるとカラー作品の発色に影響するので、今回は白い紙を使用することを確認しました。
また、入選した作品をどう使用するかどうかについても検討。基本的には絵柄をそのまま使うことで決定しましたが、塙奈緒さんについては、モチーフとなったジェッソのラベルデザインが変わったことと、ボトルのパースに若干の狂いがあるため、入選作を基本に新たに描き直していただくことに。また、山下以登さんには裏面デザイン用に絵柄のない「黒板だけ」を追加してもらうお願いをしました。国本ゆうじさんの作品はフィルムのパーフォレーション部分を別素材に差し替えることにしました。他にも、宇野さんからデザイン上のアイデアをいくつかご提案いただきました。
宇野亞喜良さんによるラフ作成
2月4日、再び宇野亞喜良さんの事務所へ。美術と構成を担当した芝居の準備や稽古などでお忙しい合間を縫って、デザインプランを考えていただきました。この日は、入稿データ作成のためのラフを起こしていただきました。

デザインラフを作成する宇野亜喜良さん。これは修正液で指示を書き込んでいるところ
作品データのプリント出力やコピーをもとに、その場でデザインラフを素早く起こしていく宇野さん。アナログ作業ですが、定規を当てて位置を決め、ペンでロゴを書き込んだり、必要に応じてホワイトを使ったりトリミングを行ったり、素早い作業ぶりにはほれぼれしてしまいます。
商品ロゴは、当初は同じもので統一する案もあったのですが、「やっぱり絵柄に合わせて変えるほうがいいですね」と個別に書体を選び、文字組や位置などを決めていきます。他にはバックの色の選定を行ったり、表4側のデザイン処理に一工夫を加えたり。入選作家8人分のラフを1時間あまりで完成させました。
デザイン入れ~入稿
翌2月5日、デザイナーの福田真一さん(DEN GRAPHICS)に宇野さんのラフをお届けし、データ作成の打ち合わせを行いました。

デザイナーの福田真一さん(DEN GRAPHICS)
福田さんは宇野さんが最近手がけた演劇ポスターすべてのデザインを担当していて、まさにツーカーの関係。また、イラストレーション誌で前号まで連載していた「宇野亞喜良 Aquirax Product」のレイアウトと特殊印刷ページのデザインも担当していました。あちらは架空の印刷物でしたが、これは実際の製品のデザインなので、さしずめ「リアルAquirax Product」というところでしょうか。今回の依頼も二つ返事で引き受けてくださりました。
福田さんはそれぞれの作品データと宇野さんのラフを確認し、編集部からデザインのポイントを伝えます。「わかりました、今晩進めておきます」。その日の夜にはレイアウトされたPDFデータがメールで送られて来ました。宇野さんにもファックスを送付し、確認をお願いします。
さらに一夜明けた2月6日、宇野さんのチェックが終わり、若干の修正を加えて、入稿データの用意ができました。ホルベインのご担当に連絡して、サーバーにアップされたデータをダウンロードして、入稿作業を進めていただきます。週明けの9日に入稿するとのご連絡があり、あとは校正を待つばかり。
初校チェック
入稿から数日後、ホルベインより初校の出校の見込みと、その先のスケジュールについて連絡がありました。予定通り翌週2月16日に待望の初校が出て、中1日おいて18日に編集部に届きました。8人分の表紙を面付けした校正紙はなかなかの大きさです。
これを入選作家8名と、もう一人の審査員であるヒグチユウコさんにも送付します。そして、その日のうちに宇野さんにお持ちして確認していただきます。初校を一瞥した宇野さんは、「いいじゃないですか。全体的にはいい感じに仕上がっていると思います」。さらに1点ずつ細かくチェックして、「木原未沙紀さんの絵がちょっと沈んでいますかね。山下以登さんのも若干明るいほうが黒板らしく見えるかな。いけがみよりゆきさんのは色はこれでいいけど、もうちょっとメリハリをつけたいですね」。キューライスさんの作品はモデルのウサギとキャンバスに描かれたウサギの濃度を揃える指示を加えました。

初校をチェックする宇野さん
宇野さんの修正指示を持って、その足で福田さんにも校正を届けに行きます。校正紙と宇野さんの指示を渡して、口頭でも内容を説明します。「なるほど」とうなずく福田さん。「ひとまず、宇野さんの指示分は修正しておきますね」
その翌日から、校正紙を送付した入選作家さんからも確認の連絡が届き始めます。そして審査員のヒグチさんからも校正確認のメールが。ご自宅ではなく出先からで、なんと、別件で宇野さんの事務所に打ち合わせに来られて、そこで確認されたとのこと。その偶然にこちらもびっくり。
作家関係では、大竹悦子さんから画像を切り抜いたフチが出ないようにしてほしいとのリクエストがあり、他の色味調整と合わせて画像修正を行い、20日にデータを再入稿しました。
再校チェック
校正戻しから約1週間、2月26日にホルベインより再校が出て発送したとのご連絡があり、翌27日に編集部に届きました。この日は、宇野さんは東京イラストレーターズ・ソサエティの総会と懇親会に出席ということで、ご本人の希望で会場に校正をお持ちすることに。懇親会が始まり、最初の挨拶が一通り済んだところで一時退出して校正チェック。初校と比較しながら「気になっていたところがとてもきれいになりましたね。これでいいと思います」
1点だけ、キューライスさんのウサギの色を濃い方で統一したのがちょっと濃すぎるとのことで、薄い方で統一することになり、デザイナーの福田さんに伝えました。週明けに修正データを受け取って、ファイル転送で印刷会社に送付しました。これで作業は終了。あとは製品サンプルの上がりを待つばかりです。
完成した製品と、入選者・審査員のコメントは、4月18日発売のイラストレーションNo.206でご紹介します。お楽しみに!
【文責:イラストレーション編集部】
【関連記事】
ホルベイン×アーティストコラボアイテム2015の発売を記念して、渋谷ロフトにて先行発売イベント(2015.04.03)