「シュレーディンガーの猫を追って」 フィリップ・フォレスト 著 澤田 直、小黒昌文 訳 河出書房新社 岡本デザイン室
生きていて、かつ死んでいること。姿を現す前に、立ち去っていること。二つの状態を合わせもつ猫の別名だ。亡き娘の喪を喪でなくし、ともに「重なって」生きるための、静かに波打つ思索がここにある。ある夜、庭の暗闇からふいに現れた一匹の猫は、パラレル・ワールドを自在に行き来しているのか。愛娘を失った痛みに対峙しつつ、量子力学と文学との接点を紡ぐ傑作。 堀江敏幸〔帯より〕 鬱々と日々を過ごす主人公の前に現れたのが一匹の猫だ。なんの変哲もない、どこにでもいそうな猫。尻尾が太くふさふさして、黒の縞が入ったグレーの毛並みの小柄な猫が、なにかの徴のように彼の生活に入り込んでくる。それは現実の猫だが、仮想世界に住む生き物でもあるように見え、語り手の瞑想は文字通り迷走し、妄想となり、猫は 反=猫 となり、鏡のなかで増殖していく。〔訳者あとがき〕より アートディレクターの岡本洋平さんより、猫を小さく、たくさん描いてください。という依頼がありました。猫のモチーフを10種類ほど描いてから、PMパッドにライトボックスで光をあてモチーフを透写し、図案を鉛筆で描き起こしていきました。PMパッドに描いた図案と、切り絵になる上質紙をピッタリ重ね合わせて、普通のカッターで図案の線の通りに切り抜いていきます。装幀のデザインの色は、デザイナーさんにいつもお任せして自由にやっていただいています。新しい技法が発見できるのは、デザイナーさんとの共同作業の賜物であります。