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イラストレーターと著作権

「買取り」の仕事と著作者人格権 ─ 覆面座談会|【Web連載】イラストレーターと著作権 第4回

【Web連載】イラストレーターと著作権 第4回

本連載は、イラストレーターやイラストレーターといっしょに仕事をする方々のために、著作権の基礎知識から運用上の注意点まで、主にQ&A方式でわかりやすく解説していきます。

今回は、現場の第一線で活躍するイラストレーターたちの覆面座談会を通じて、著作権の「買い取り」問題と、契約の際の注意点について考えます。

一般社団法人東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)編
アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)
イラストレーション:中村 隆


「買取り」の仕事と著作者人格権─ 覆面座談会

B: =50代女性/C: =40代女性/E: =40代男性/H: =50代男性


B: 最近は広告などでは買い取りの仕事ってすごく多いです。買い取りだと、自分のウェブにも出しちゃいけないとか。

C: 契約書の中に「著作者人格権は一切行使しない」という一文が入れられてることが結構あって、代理店の発注書にもちょろっと書いてることがあるんですよ。OKしてしまうと、自分のホームページにも載せられないし、Bさんの作品を見て他の会社がプレゼンに使いたいときにもいちいち聞かなきゃいけなくなっちゃうんで。

B: 契約書とか何もないんですけど。

E: そしたら、それはちょっとおかしいって言っていいですね。

H: 特定のアイドルを描いたとかじゃない?

B: それもあるし、その本人が出してほしくないって

E: ああ、それは肖像権の問題が絡んで来るから。

C: 肖像権と、広告の場合はタレントと企業の契約があるから、契約が終了した広告がいつまでも出てると困ることがあるから、残念だけど仕方ないですね。

E: 僕は著作権買い取りのでエラい目に遭ったことがあって、買い取りに同意する条件でテレビ番組のキャラクターの仕事をやったのですが、契約書を読んでもどんな影響があるかまではわからなかった。よく見てみるとものすごい条項があって、まず著作権自体を渡せとなっていて、さらに譲渡した著作物に類するものは自動的に先方のものになると書いてあった。「類するもの」ってことは、そもそも普段描いてるのに近いものを描いて渡してるから、僕が普通にいろんなものを作ったら全部そっちのものになるのか? という疑問が出てきて。で、法律上はそうらしいって。ちょっと待ってくれと。

そこでエージェントに助けを求めたんです。相手の窓口もコンテンツ事業部の人に変わったんだけど、「我々はあなたの権利を丸ごと奪おうというわけではない、番組のウェブなどいろんなところに使いたいが、改変が必要な場合にいちいち許可を取れないから買い取り契約にしている」という話で。

たまたま今回は相手が僕の活動を侵害する意図はないと言ってくれたからよかったけど、テレビ局などはほとんどそういう形で契約するみたいだから、それは本当に危ないしやっちゃいけない。僕とエージェントの人とテレビ局の窓口担当とで話を詰めて、最終的にこの仕事で描いたものは全て譲渡する代わりに、先方は僕が他で作った類似するものに対して一切文句は言わない、僕が他の広告の仕事をやるのも構わないという契約に出来たけど、これはおかしいだろっていう文言を一つひとつ消していくのに3カ月かかりました。契約書は内容をちゃんと把握して精査しないといけないなって身に染みて思いましたね。

C: そういう契約書って、法律とか憲法に照らしたら、企業がこんなひどいこと個人に言っちゃいけないよねってことが結構書かれていて、企業の側もそれを指摘されたくないはずなんですよね。だからちゃんと読んで「これはないんじゃない?」っていうことを根気よく言えば、先方も認めざるを得ないと思うんですよ。

E: まず契約書に書いてあることを読み解いて、それはおかしい、ひどいことだって気づかないといけない。弁護士さんに説明してもらうと、「法律としてはこうだ」という話になってしまうんですよ。それよりその条項の内容をどう捉えるべきか、イラストレーターにどんなメリットとデメリットがあるのか、それを容認していいのかアドバイスが欲しい。

H: 弁護士さんに相談するのもいいけど、これは明らかに違法だとなると、そこで話が終わって仕事自体がなくなったりする。そうではなくて、仕事を受ける前提でどう交渉したらいいかっていう。

E: 法律をどう運用していくべきかという話なので、契約に直接関わる人に聞いた方がいいと思います。僕が相談したエージェントの人は、「私は法律のことを全部わかるわけじゃないけど、それでどんなことになるのかはわかる」と話していて、そこを話していかないと意味がないかもなって。

C: こちらを縛るような内容の文言が出て来て「これはこういうふうに悪くも受け取れるけど」と言うと「いやいや、我々はこちらの権利の話をしたいだけでそんなつもりはないんです」なんてことも結構ある。おかしいなと思ったらとりあえず何を意図しているのか聞いて、問題があれば「この場合はこうだ」と但し書きを入れてもらうとかしていけばいいんですよ。

E: 契約書類に危ない語句、こういう文言が出てきたときは注意しなさいっていうのを、みんなで情報共有して伝え合っていくしかないと思います。


東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)Webサイト


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アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)

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