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イラストレーターと著作権

資料の重要性が理解されていない|【Web連載】イラストレーターと著作権 第13回

【Web連載】イラストレーターと著作権 第13回(最終回)

本連載は、イラストレーターやイラストレーターといっしょに仕事をする方々のために、著作権の基礎知識から運用上の注意点まで、主にQ&A方式でわかりやすく解説していきます。

一般社団法人東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)編
アドバイザー:大川宏/亀岡知子(総合法律事務所あおぞら)
イラストレーション:中村 隆


資料の重要性が理解されていない ─ 覆面座談会

A=60代男性/C=40代女性/D=40代男性/E=40代男性/F=50代男性/H=50代男性/編=編集部

 

H:どんな画風でも、資料なしに成立するイラストレーションの仕事はまずほとんどない。

編:絵を描くための資料にも著作権があり、場合によっては著作権侵害になることもあります。許可を取ればいいわけですが、全ての資料でそれを行うのは現実的に困難です。

E:防御策としては、何を参考にしたのかという出所が分からないようにするしかない。

H:時代物で、幕末頃の写真、初めて龍馬が写真を撮られた頃、あのへんはどの程度まで使えるのかっていう。

編:写真の著作権保護期間は著作者の死後70年なので、その時代のものはすでにパブリックドメイン(公共資産)になっています。

F:昔の時代劇を参考にするのは全然問題ないのかな。

編:映画の著作権保護期間は公表から70年間なので、第二次大戦前に撮られた作品の著作権保護期間は切れています。

E:警察の会議室みたいな絵を描かないといけないんですけど、資料なくて困るんですよね。警察ドラマをよく参考にするんですけど。

H:警察の制服も今と昔で違ってたりします。

E:そう、困るのは階級とか。最近は、よく分からないものはもう描かないか、シルエットにしちゃいます。ただ、そうすると振り幅が狭くなって、構図とか限られて来るのが困る。

H:法廷の場面とかは、法廷の画像を持っている人がいてそれがすごく役に立った。いろんな人に言ってるんだけど、最近はイラストレーター同士で資料をシェアしているんです。時代物とか特定の方面に強い人がいて、ものすごい資料があるから。メールで聞くと、その日のうちに画像が来たりする。

E:僕は法律系の映画をいっぱい借りて、法廷の場面を資料として残してます。どんな位置に座るのかとか、どういう立ち位置になってるかとか分からないから。

H:時代物では、自分で着物を着て写真撮ってる人もいるし。

F:浅草に行けば大体そろいますよ。

E:実際に見ないと分からないのもある。「こんな感じのポーズが描きたい」と想像しながら描くんだけど、「なんか違う」ってなるのがくやしくてしょうがない。飛鳥時代の仕事をやった時に、資料がないのがすごくつらくて、編集の人が「大仏建立」みたいなドラマか何かの映像を探して来てくれて、それで服装とかが一発で分かって助かりました。

F:中国の歴史物も難しい。もう好きに描いていいと言われて、それっぽく描きました。

C:誰も正解が分からないですもんね。

H:時代考証にうるさい人はごく一部のマニアだけだと思う。そこはあまり相手にしないようにしています。あまりに違ってるとちょっとまずいけど。

F:逆に、編集者がこだわらさなすぎるのもイラっとします。甲賀忍者は星形の手裏剣は使いませんっていうのに、「星形の方が分かりやすい」とか。

編:テーマやモチーフが特殊で、その場所に行った人が他にいないとか、通常撮影が許されないものなど、撮影者が特定できる写真を資料にしたらすぐ分かってしまう。

C:そういうときは写真家にちゃんと許可とらなきゃいけないですよね。

H:ただ、同意を得る前に締め切りが来るパターンが多いから。

E:ネット検索でパッと見てこれ使えそうだなと思っても、実は有名な写真家が撮ったものだとアウトになっちゃうのかな。

編:ネットは無断転載も多いので、写真の正しい出所を把握することが重要ですね。

E:例えば飛行機を描く場合、検索で飛行機の画像がいっぱい出て来るじゃないですか。それを見ながら絵の一部に飛行機を描いたと、形は同じだってなったときに、それは著作権の侵害になるのかなって。

H:絵の一部に入れるだけなら問題ないでしょう。絵全体が別の世界になっていれば。

編:背景を変えたり切り抜きで使ったら、元の写真を特定するのは難しいと思います。

H:前はよく自分で写真を撮ってたんですよ。でもいろんなアクションの写真を撮るために外で寝そべってローアングルで撮ったりしてたら、今は完全に不審者扱いだからね。

E:僕もそれよくやってました。子どもの資料ってなかなかなくてすごく苦労したな。小学生の資料がほしくて、小学校の前で間違ってフラッシュを焚いてめっちゃ白い目で見られたことがありました。

H:知り合いは幼稚園で写真を撮っていて通報されました。僕も小学校の写真を撮りに行って、体育してる子どもがいてこっそり撮った。

E:校舎の資料が欲しいんだけど、近所に女子校しかなくて。どうしようかなと考えて、日曜日に撮りに行きました。

D:日曜日でもまずいんじゃない?

資料集めにはお金も手間もかかる

H:今はネット検索ですごい情報量を集められるようになったけど、でもその分、周りも情報を仕入れているということだから。

E:徹底するんだったら、自分で全部用意するしかないということですね。

C:やっぱり、出版社とか依頼主が資料に対して無責任ですよね。

H:編集者はなかなか資料集めてくれないですよ。

E:視点が違うので、集めてもらっても使えないことが多いし、サブ的な扱いで使えるくらいですよね。

編:自分で集めて「この資料が使いたいから使用許可を取ってください」と編集者に頼む方法がありますね。

C:そういう手配をしなきゃいけないという自覚がなかったり、そのための時間を確保してないことがすごく多い。描き手だけに責任が来るのはどうかと思いますよね。

E:「描いてください、よろしくお願いします」でおしまいですからね。

C:イラストレーターは何も見ないでも絵が描けるとみんな思ってるんですよね。

H:素人は「プロのイラストレーターはみんな頭の中で考えて構成する」と思ってるらしいんだよ。

A:僕はリアル派じゃないから、あんまり見ないほうかも。資料見ても似ないからな(笑)。

E:デザイナーさんとか、もうほぼ出来上がりの段階で「なんか違う」と言う人がいるんですよ。この前、正面衝突の交通事故の絵を描いたんです。僕は斜め横からの構図がかっこいいと思って描いたら、真正面から描いてほしかったって言うんです。えーっそれ先に言ってよって。これを描くためにたくさん資料用意したのに、もう1回探し直さなきゃって。

H:1枚描くのに20〜30枚は資料用意するじゃん。

F:そっちのほうが時間かかる。

E:資料の必要性・重要性は編集の人にも啓蒙していかないといけない。もう言うしかないですよ、「資料集めるの大変なんです」って。

編:資料集めにかかる経費の話にもなっていきますよね。


東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)Webサイト


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