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イラストレーターのお仕事帳

イラストレーターのお仕事帳 ~No.009 YUTAKA NOJIMAさん~

イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載を毎月お届け。クライアントワークにまつわる5つの質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第9回でお話をうかがったのは、YUTAKA NOJIMAさんです。

 

┃クライアントワークを受注するために普段していること

ざっくりとした答えではありますが、人の縁を大切にしています。周囲の人から、僕にはこういう人や仕事が合っているんじゃないかと紹介してもらうことで人脈が広がり、仕事の話が舞い込んでくる感覚があります。

いまはあまりできていませんが、サニーデイ・サービスのライブビジュアルの仕事は持ち込みによるものです。過去の依頼でアメリカのレコードショップの映画のグッズを作ったのですが、その映画のコメントを曽我部恵一さんがしていたこともあって、依頼につながりました。こうやって1つ仕事をするとどこかに繋がっていく感覚があります。自分は音楽が好きなので、好きなことに関連する依頼をいただけてありがたいですね。

また、クライアントワーク以外に日本や台湾でアナログで描いた絵の個展をしていて、イラストレーターと画家という2つの軸を大事にしています。その際、クライアントワークと個展で描く絵の世界観が分離しないよう心がけています。過去の個展で、パーソナルワークと仕事で描いた絵を一緒に飾ったことがあるんです。お客さんにはどちらが仕事でどちらが自分の絵か、絵の内容を読み解くまでわからない。そういう状態がすごく大事なんだなと感じました。

台湾での活動も、意図的に始まったわけではなくいろいろな仕事が繋がっていまの形になっていきました。きっかけは数年前のコーヒーショップでの展示です。作品を見た台湾のアートディレクターの方が僕のSNSをフォローしてくれて、その2年後ぐらいに台北の百貨店でアニバーサリー広告と個展をしないかと声がかかりました。そこから系列店がある台中の百貨店でも展示をして、百貨店のテナントに入っていたTSUTAYAとコラボをして、それを見た台湾のアパレルからグッズの依頼が来て……、という流れで仕事が広がっていきました。直近では台北のGŪLŪ GURUという店舗でのイベントビジュアルを手がけました。台湾の仕事の進め方は日本とはまた違っていて、自分の想像を超えることがあっておもしろいです。

台北にあるGŪLŪ GURUのイベントビジュアル

  

┃ファイルWeb経由で依頼があった印象的なお仕事

岐阜の歯医者さんから院内に飾る絵の作品購入の依頼があって思い出深かったです。

子ども向けに描いてほしいというリクエストで、すべて歯にまつわるモチーフや言葉を描き入れました。ちょうどその頃、甥っ子が一生懸命歯を磨いているのがかわいくて、歯磨きしている子どもを描きたいなと思っていたんです。そんな時にこの依頼が来たのでうれしかったです。

乳歯が大人の歯に生え変わることって、身長が伸びるとか声変わりするのとはまた違う、不思議な現象じゃないですか。日本だと抜けた歯を屋根の上に投げたりしますが、海外では枕の下に入れるとネズミの妖精がプレゼントをくれるという言い伝えがある国もあるそうで。また、親知らずは知恵がつく頃に生え変わるという意味でwisdom toothというらしく、その知恵の実としてリンゴを描き入れたりもしました。他には、英語で「乳歯が変わるのは成長すること、大人になることだよ」という意味の文を書いて、そのうち青い部分を拾って読むと「sing a song」になるようにしています。鼻歌を歌いながら大人になろうね、という意味をこめました。

制作はラフをお渡しして、専門家の立場からおかしなところがないか確認してもらいながら進めました。自分の暮らす東京から離れた岐阜の歯医者さんで飾っていただいているというのが、なんだか不思議でうれしいです。

中央のテキストの、青い文字をつなげると「SING A SONG」になる

 

┃クライアントワークの際に心がけていること

クライアントと仲良くなることです。僕は遊び心でモチーフを入れることが多いので、毎回どこまでできるのか探り探りなところがあります。打ち合わせでたくさんしゃべって温度感を探っていくんですが、意外と雑談の中で求められているものがわかることがあったりします。話しながらアイデアが出ることもあるので、そういうやりとりが一番楽しいですね。

仕事のときは、まず担当者に喜んでほしいという気持ちがあります。納品した先に購入者の方がいることは大前提として、それでも頼んでくださった人が驚くようなものを描きたいという想いで取り組んでいます。ただ、最近はリモートの打ち合わせが多く、コミュニケーションの取り方が難しいなと感じることがあります。ご依頼内容を確認して、スピード感をもって完成させることもとても大切なことですが、雑談も交えながら進めていく方 が、こちらもリラックスして描けることがあるんです。仕事によってはクライアントと直接話す機会が1回もないということもあり、ちょっと寂しいなぁ……と思う時もあります。人が描く意味って、付き合いや余談、縁から生まれるアイデアやユーモアにあると思うので、今後も人との関わりは大事にしていきたいです。

 

┃使用している制作ツール

イラストレーションの仕事は、修正に対応できるようにiPadとProcreateのデジタル体制で制作をしています。個展の絵は完全アナログで、アクリル絵具を使っています。

グラデーションをよく使う人はツールによって仕上がりが変わるかもしれないですけど、自分の絵はベタ塗りなので、デジタルで描いても原画にしても完成物にそこまで差がないんです。なので、作品は手で描いて、イラストの仕事はデジタルで、という使い分けをあまり悩まずにしています。

NOJIMAさんが日々の制作をしているアトリエの様子

 

┃今後してみたいお仕事

レコードジャケットのイラストレーションですね。音楽関係の仕事は過去に経験しましたが、ジャケットはまだやったことがなくて。あとはPVもやりたいです。アニメーションで絵を動かしてみたくて、After Effectsを学ぼうとはしているんですけど全然追いつかなくて。自分は絵を描くことに集中して、アニメーションはプロに任せる形がいいのかなと思ったりしています。

他には、ラグジュアリーブランドとの仕事も夢です。職人のような方々と一緒に何かを作りたいと思っているので、自分が好きなものと出会って、一緒に何かを作ることができるのがこの仕事の素敵な部分だと感じています。台湾での活動も今年から本格的に両立させていきたいです。

 


YUTAKA NOJIMA(野島佑隆)

1995 年生まれ。アーティストとしても作品を制作し、 東京、台湾で定期的に個展を開催。 adidasをはじめ、アパレル・音楽・映画・書籍の イラストやグッズなどを手がけている。 細かく構成したイラストや、モチーフ単体を描いたものに加え、 カラーだけではなく、モノクロの作品も制作可能。 カラフルでポップな世界観から、モノクロやフォントのみのシンプルな作品まで、 幅広く描いている。

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