イラストレーターのお仕事帳
イラストレーターのお仕事帳 ~No.012 田渕正敏さん~
イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載を毎月お届け。クライアントワークを中心にした10個の質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第12回でお話をうかがったのは、田渕正敏さんです。

┃イラストレーターになって最初に受けた仕事
携帯電話のパンフレットの挿絵(2カット)
┃依頼の経緯
2011年にイラストレーターと名乗り始めたものの、仕事は無く、アルバイトや派遣の仕事でさまざまなデザイン事務所を転々としながら生活していました。
派遣先では主にDTPを担当していたのですが、ある会社に派遣された際、「私はイラストレーターです」と自己紹介したところ、担当のアートディレクターから「カンプを描いてみてくれる?」と指示を受け、見よう見まねで撮影用の指示書やラフを作成し始めました。
その会社ではイラストレーション制作の場合にもカンプが必要だったため、携帯電話のパンフレット用として制作したところ、後日そのカンプが採用され、そのままのタッチで仕上げてほしいというアートディレクターの判断から、正式にイラストを発注されました。
┃クライアントワークを受注するために普段していること
仕事のご依頼はほぼウェブサイト経由なので、そちらで過去の仕事が一覧できるように小まめに成果物を撮影してアップロードしています。友人の花村太郎くんに2013年に作ってもらったウェブサイトで10年以上が経ちましたが、いまだにトップページでイラストを一覧できる仕様が私の場合、とても有効だと感じています。
私は描くスタイルが変化しやすいので、定期的に展示をすることで現在描いているものを知ってもらえるような機会を作ることも大事にしています。
┃イラストレーションファイルまたはファイルWeb経由で依頼のあった印象的だったお仕事
イラストレーションファイルからのご依頼は毎年1〜2件あります。
ファイルは前年のお仕事の中からセレクトして、見せ方を絞っているのでご依頼の内容も明確で、最近の私の仕事に興味を持ってくださった方ばかりです。
特に記憶に残っているのは有山達也さん、山本祐衣さんとのお仕事で、2020年に発売された『本の読める場所を求めて』阿久津隆 著(朝日出版社)という書籍の装画を担当したことです。
打ち合わせでチャンスがあれば、どこで私のイラストを知ってくださったのか尋ねるようにしているのですが、アリヤマデザインストア内でイラストレーションファイルを見ていて気になったとおっしゃっていました。


┃なぜ印象的だったか
まず何よりも本が面白かったです。ゲラを読み始めた時点で無数のイメージが浮かびました。
2020年、コロナ禍で打ち合わせのほとんどがリモートになる中で、対面で話ができた数少ないお仕事でした。アリヤマデザインストアとのお仕事は初めてで緊張していましたが、ラフをお見せしたら「このまま好きに描いてください」と言われて、ある意味で仕事を忘れて没頭し、1冊の作品集ができるほどたくさんの絵を描いてしまいました。

┃クライアントワークの際に心がけていること
「求められているものはコレだろう」というところに早く到達して、そこからいかに飛躍できるかということを大切にしています。行き過ぎたら(描き過ぎたら)戻って、また進めて、戻ってという充分な時間が確保できる案件はとても上手くいきます。
書籍の仕事が多いので、ゲラを読んでイメージを作っていくわけですが、編集者やデザイナーの読み込み方が参考になることも多く、限られた打ち合わせでの意見交換の時間を大事にしています。
┃仕事を受ける時/断る時の判断基準
イラストレーターになるきっかけが書店で見た装画だったので、書籍の仕事は積極的に受けるようにしています。メールの文面だけでは判断できない場合は、ゲラを送っていただき検討します。
パッケージや広告の仕事も多いので、できるだけ作業日を分散して振り分けて同時進行できるように工夫しています。
基本的にはどんなお仕事も指名されている時点でうれしいのですが、スケジュールが充分に確保できなかったり、制作費の折り合いがつかなかったりする場合は、依頼者も私もお互いによい結果に繋がらないのでお断りすることがあります。
┃使用している制作ツール
アナログ:ポスターカラー、色鉛筆、ボールペン、マスキングテープ、画用紙など
デジタル:Mac mini、ペンタブ、Adobe Photoshop、llustrator
┃得意ジャンル
小説の装画、食品のイラストレーション

┃今後してみたいお仕事
今後も装画やパッケージを中心に活動を続けて行きたいと思っています。
また新たなイラストレーションの表現を模索し始めているところで、日々、試行錯誤しています。たとえば装画というジャンルでは、書店で売場を見ていると「こんな絵があったらいいんじゃないか」と隙間のようなものが見えてくることがあります。そこにアプローチできるようなイラストレーションを描きたいと思います。
田渕正敏(TABUCHI Masatoshi)
書籍、音楽、ファッション、パッケージ等幅広いジャンルのイラストレーションに関わっている。 グラフィックデザイナー・松田洋和とともに“へきち”という活動体を立ち上げ、ディレクションを担うプロジェクトにも積極的に参加している。
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