イラストレーターのお仕事帳
イラストレーターのお仕事帳 ~No.011 ゴトーヒナコさん~
イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載を毎月お届け。今回から内容をプチリニューアルし、クライアントワークを中心にした10個の質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第11回でお話をうかがったのは、ゴトーヒナコさんです。

┃イラストレーターになって最初に受けた仕事
最初に受けたお仕事は、詩人・古屋朋さんの詩集『てばなし』の装画です。

┃依頼の経緯
もともと古屋さんとはSNSで長い間繋がっていて、“いいね”をしあうような仲でした。展覧会にも何度も来てくださっていて、その中で「今度詩集を出版するので、装画をお願いしたい」と直接ご依頼をいただきました。
私はライフワークとして、オリジナルのイラストレーションをSNSなどに投稿し、展覧会で発表したり、ZINEを作って販売したりしています。古屋さんから、その中の作品の1つを詩集に使いたいとお話をいただきました。
私も古屋さんの詩のファンでしたし、古屋さんも私のイラストを好きと言ってくださっていたので、お声かけいただけたことがとてもうれしかったです。
┃クライアントワークを受注するために普段していること
古屋さんとの出会いもそうですが、SNSに定期的に投稿することや、イベントに出る、個展をするという流れは、いままであまり変えずに続けてきたと思います。自分が活動していることを表に出し、それを継続することは意識しています。
SNSを通じて感じるのは、長く続けていると、過去にまいた種が発芽するような感覚があることです。10年前につながった、当時はまだ学生だった方が、いまではデザイナーや小説家になり、何年も経ってから声をかけてくれることがあります。
いまはSNSも多様なので、自分が居心地よく感じる場所で、無理なく続けていくのがいいのかなと思っています。
┃印象的だったお仕事
1つに絞るのは難しいのですが、松任谷由実さんによる歌詞集『ハロー、マイ・ユーミン 荒井由実&松任谷由実&呉田軽穂 歌詞集』の装画と挿絵のお仕事です。

┃なぜ印象的だったか
とても単純な理由なのですが、個人的にも小さい頃からよく聴いていたアーティストのお仕事に関わることができたのは、大きな衝撃でした。しかも家族も大ファンだったので……大騒ぎでした。
その時ふと思ったのが、自分の世界の範囲を超えるような、大きな世界に個人で関わることができるのは、イラストレーターの面白いところかもしれない、ということでした。
イラストレーターとしてやっていこうと決めた時、思い切って勤めていた会社を退職しました。会社員でなくなることを家族も心配していたと思うのですが、このお仕事をとおして、少し安心してもらえたというか、「ちゃんとやっているんだな」と認めてもらえたような気がしています。
┃クライアントワークの際に心がけていること
装画では、必ずゲラにマーカーを引きながら、よく読むようにしています。そのなかで5W1Hの情報も大切だと思うのですが、そこから少しずらして、作品の内容を自分なりに概念化することが多い気がします。
どちらかというと、どこで何をしているかということよりも、登場人物の感情の方が気になり、それをどうモチーフに落とし込むかを考えることが多いです。
もちろん、構図などにご希望があればそれに沿って描きますし、こういうものを足していいか、引いていいかなどは、確認しながら進めるようにしています。
最近は音楽のジャケットなどのお仕事もあるので、音楽の場合も何度も聴いてから制作するようにしています。
┃仕事を受ける時/断る時の判断基準
スケジュールと予算のバランスを見て、お断りすることがあります。特に大きいのはスケジュールです。
それ以外では、いまのところあまりお断りしていないと思います。
┃使用している制作ツール
お仕事ではデジタルで描くことが多いです。iPadのProcreateでラフを作り、着彩はAdobe FrescoとPhotoshopを行き来しながら制作しています。
場合によっては、一部に絵具やペン画などのアナログ作業を組み合わせることもあります。
ご希望がある場合は、すべてアナログ作画で仕上げることもあります。
┃得意ジャンル
ファンタジーなど、少し不思議なものを描くのが得意というか、好きだなと思います。



┃今後してみたいお仕事
自分の絵の世界観を出せるようなお仕事をしてみたいです。例えば、ゲームの世界観づくりに関わったり、自分の絵が動いたり、1枚の絵で見せているものが、別の形で違った見え方になっていくような体験をしてみたいです。
ただ、アニメーションのスキルがないので、いまのところは自分1人ではなかなか難しそうだなと思っています。いつか誰かと一緒にできたら面白そうです。自分の範囲の外側にあるものを経験してみたいです。
ゴトーヒナコ(GOTO Hinako)
イラストレーター・画家/東京都出身/TIS会員/青山塾イラストレーション科23、24期修了
静けさや余白、感情の揺らぎをテーマに、物語の気配を感じさせる世界を描く。 書籍装画、挿絵、展示を中心に活動中。
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