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イラストレーターのお仕事帳

イラストレーターのお仕事帳 ~No.002 さいとうつづりさん~

イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載がスタート。クライアントワークにまつわる5つの質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第2回でお話をうかがったのは、さいとうつづりさんです。

┃クライアントワークを受注するために普段していること

ホームページとInstagramとファイルWebで作品を公開しています。

SNSで発信するのが当たり前になり、そこからのお仕事が多いことも理解しているのですが、もともと自分自身と対峙するように絵を描いてきたためか、SNSで発信することへはやや苦手意識があります。その分、ホームページやファイルWebがあることに助けられています。

ファイルWebは他の作家さんと一緒に作品が並ぶので、自分のイラストレーションを客観的に見ることができる場でもあると感じています。なので、何を求めていただけるかを意識して自分らしい作品を並べつつ、印象がまとまり過ぎないようにしています。

先日、衝動的に描いた落書きのようなものから、自分にとって新しいタッチが生まれそうな兆しが見えました。それを形にしていけたらと少しワクワクとしています。

視点を外側に向けて、これからは見つけていただける場をもっと増やせるようしていきたいと考えています。

 

┃ファイルWeb経由で依頼があった印象的なお仕事

文藝春秋の文芸雑誌『オール讀物』から依頼をいただき、原田ひ香さんの連載小説「♯台所のあるところ」の扉絵を担当しています。

普段はカラーの作品を描くことが多いのですが、ファイルWebにアップしている白黒の作品を作家さんと編集部の方がご覧になったようで、優しい雰囲気の扉にしたいという思いから私を選んでくださったと伺い、依頼が来た時はうれしかったです。

このお仕事は隔月で1年間の連載で、すべてメールでやりとりをしています。1回目はモチーフのご希望を伺いましたが、2回目からはモチーフの指定がなく、小説を読んでからラフを何案か提出し、選ばれたものを仕上げるといった形でほぼ自由に描かせていただきました。

今回の扉絵は白と黒で見せるということで、いつもよりコントラストを上げたりタッチを強めにしたり、印刷した時に見やすいように描くことを心がけました。連載1回目はタッチが印刷した質感と合わず、苦労する場面もありましたが、2回目からはそれをふまえたうえで調節したり、お話から空気感や景色を想像したり、楽しみながら制作しました。

この連載で描いたイラストレーションは、普段あまり扱わないモチーフやテイストではありますが、自分1人で絵を描いている時には生まれないものを自然に描くことができました。「こんな風に描くことができるんだ」と気づけた喜びがありましたし、仕事をとおして見つけられるものがたくさんありました。そのように挑戦の機会をいただけて、ありがたい依頼でした。

『オール讀物』2025年3・4月号(文藝春秋)「♯台所のあるところ」扉絵/2025年/著 原田ひ香
『オール讀物』2025年5・6月号(文藝春秋)「♯台所のあるところ」扉絵/2025年/著 原田ひ香
『オール讀物』2025年9・10月号(文藝春秋)「♯台所のあるところ」扉絵/2025年/著 原田ひ香

 

┃クライアントワークの際に心がけていること

イメージを膨らませて、想像的に捉えることです。

私の絵は絵画的要素が強いと自認しています。また、実際そのように作品を見てくださる方が多いようです。制約の中で作風を活かして「言葉ではうまく言い表せないけれど、こういう気配かもしれない」と感じていただけるものを視覚化できればいいなと思っています。

特別にオリジナリティは意識していませんが、描いたものを見ていただき、その輪が繋がって、「この人に仕事を依頼したい」と思ってもらえることが理想です。依頼してくださった方に喜んでいただきたいので、「絶対にいい絵にしよう」という気持ちで制作しています。

 

┃使用している制作ツール

制作はすべてアナログで、主にアクリル系の絵具を使用しています。一部で色鉛筆やインク、箔や岩絵具といった日本画画材なども使っています。大学で日本画を学んでいたこともあり、これまで絵具の素材としての美しさに惹かれてきました。

また、アナログだからこそ得られる緊張感と実感を大切にしています。私にとってアナログで制作するのはとても重要な要素なのでこれからもこだわっていきたいです。

 

┃今後してみたいお仕事

装画のお仕事がしたいです。そのほかには、一枚絵で使っていただけるポスターやジャケット、そして私自身も詩を書くので、ストーリーのある大人の絵本などにも興味があります。

プライベートでは、山や森や動物、自然と人の暮らし、音楽や文化、ひそやかなものやプリミティブなものに惹かれているので、そうしたものに関わるお仕事ができるとうれしいです。

ただ、いまはまだ実績を積みたい段階ですし、可能性を広げていきたいと考えています。先ほど挙げた仕事にかぎらず、デザイナーや編集の方とどのようなものを作ってゆくことができるか、柔軟に挑戦していきたいです。

  

 

 


さいとうつづり(SAITO Tsuzuri)

illustration & poetry
東京都在住。武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業。

⌘ 主な仕事 ⌘
装画・広告・雑誌扉絵・市報・童謡画・CDジャケットなど

装画、広告、大人向け絵本等、広く柔軟にお仕事をしていきたいです。

森 / 音楽 / 植物 / 古いもの / 動物 / ボタニカル / 喫茶 / 暮らし / ナチュラル / 散歩 / 読書 / 登山 / 手仕事 / 旅

⌘〈zarsche:ザーシェ〉は私の描く少女の総称です
HP:https://www.zarsche.com

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