イラストレーターのお仕事帳
イラストレーターのお仕事帳 ~No.004 山本直孝さん~
イラストレーションファイルWebに掲載中の作家にフォーカスする連載を毎月お届け。クライアントワークにまつわる5つの質問をとおして、イラストレーターの仕事との向き合い方を紹介していきます。第4回でお話をうかがったのは、山本直孝さんです。

┃クライアントワークを受注するために普段していること
基本は、SNSやファイルWebに投稿をしています。
あとは一度仕事してから1、2年くらい期間が空いたクライアントやデザイナーに「最近はこういう仕事をしています、また何かありましたらよろしくお願いします」というメールをするようにしています。場合によっては、カタログやカレンダーの実物を一緒に送ることもあります。その時は、手がけた仕事のタッチなど、その人好みなのではないかなども考えて連絡するようにしていますね。
それがきっかけでまたご依頼をいただくこともあるので、年に数回そういった連絡をしています。時には、連絡した方の知り合いから依頼がくることもあります。
いま新しくクライアントを開拓するのがすごく大変なので、これまでご一緒してきた人や現在進行形で仕事している人を大事にした方がいいのではと思っていて。忘れられたら終わりなんじゃないかなという思いがあるので、その関係性や繋がりを切らさないようにしています。
┃ファイルWeb経由で依頼があった印象的なお仕事
mod's hairからのカレンダーとショップカードの依頼です。去年初めて来た仕事ですが、2026年分も引き続き担当しました。mod's hairのみなさんが絵を気に入ってくれたようで、都内の店舗で描いた絵の原画を1点ずつ展示したり、原画を買い取りたいというご連絡をいただいたり……。今までそんなことをしたことがなかったので、余計嬉しかったです。
今年も年明けから2月末まで展示が決まっていて、青山や二子玉川、銀座の店舗などを巡回するそうです。
絵柄やモチーフなどは基本的にお任せということで自由に描かせていただきましたが、美容室ということもあり髪型だけ指示をいただきました。mod's hairではヘアスタイルに名前がついているそうで、その資料の中から好きなヘアスタイルを選んで描いています。なので、カレンダーやカードに登場する人物はそれぞれ名前がついた髪型になっています。

この絵は、木の板全体に黒いマスキングテープをカッターでカットし、ピンセットではがして絵にしています。剥がすまでどんな絵柄になるか自分もわからないので、光に当てて線を確認しながら形にしていきました。
もともと、海外の白黒写真を見るのが好きで、仕事とは関係なく毎日見ているので、ところどころ自分で集めた資料もモチーフとして活かしました。例えば右側に描いているのは新聞スタンドなんですけど、いつか絵にしたいと思ってストックしていた資料をもとにしています。

また、依頼をいただいた2024年がパリにあるmod's hairの1号店の50周年の年だったので、「mod's hair 2025 カレンダー 3月・4月」では当時の店舗を描いてみました。こちらは先方から当時の様子がわかる資料をいただいたのでそれを参考にしています。

今年は先方から入れてほしいフランス語のメッセージをいただいたので、そこから絵のイメージを膨らませて考えていきました。文字や月のアルファベットもマスキングテープで作っています。
カレンダーの仕様上2カ月間同じページになるので、絵柄を考えるときはなるべく飽きさせないようにということを意識しました。
あとは、養老乃瀧の社内報の仕事もファイルWeb経由でいただきました。表紙と、中面の似顔絵を担当しています。表紙はマスキングテープを使っていますが、似顔絵は絵具を使っています。

依頼を受けることが決まってから、実際に養老乃瀧で出している料理の絵を描いてもらうためにまずは商品を知ってほしいということで、デザイナーも一緒に本社に呼んでいただいたんです。オープン前の店舗に行くと、テーブルに商品が並べられていて。僕はお酒が飲めないので食べる担当になって鍋や牛丼や刺身などをどんどん食べていきました。その時点ではまだ何を描くか決まってなかったので、とにかく出していただいたものを写真を撮りながらひたすら食べていくということがありました(笑)。
この案件もまた来年1年間担当することが決まっているのですが、なかなか印象的な出来事でした。
┃クライアントワークの際に心がけていること
クライアントに「頼んでよかった」と言われるように心がけています。
最初にそれを言われたのがもう20年以上前なんですけど、新聞広告の仕事で車を描いたことがあったんです。その時はまだデータのやりとりをしていない時代で、原画を直接持参して見せていたんです。事前に、カンプライター(*)が僕のタッチに似せたラフを作ってくれていたんですけど、クライアントに納品に行ったら「やっぱ違うわ、頼んでよかった」という言葉をもらってすごく嬉しかったのを覚えています。
それと制作時の楽しさがクライアントにちゃんと伝わるといいなと思いながら描いています。僕が楽しい気持ちで描いた絵は、相手も喜んでくれることが多いんです。途中で楽しくなくなったりしたら、絵柄を全部変えたりすることもよくあります。そういうものは絵を通して伝わるんじゃないのかなと思っているので、絶対に曲げないようにしています。
*:広告などの制作過程でラフを専門的に作成する人
┃使用している制作ツール
いま一番使ってるのはマスキングテープです。あとはアクリル絵具や色鉛筆を使うこともあります。線画の仕事の時はボールペンで描いていて、描く絵によっていろいろ使っていますね。
マスキングテープを使う今のスタイルになったのは12〜13年前です。仕事が思うようにできなかった時期に、家で妻が買っていたテープの色味に惹かれ、「これで絵を描いてみたら面白いのでは」と思ったのがきっかけでした。カッティングマットに貼って試しながら技法を探っていくうちに、だんだん形になっていきました。
その後、雑誌『LEON』の打ち合わせに試作を持参したところ気に入っていただき、実際のページで使われたことで、この手法に本格的に取り組むようになりました。
┃今後してみたいお仕事
映画関係の仕事をやってみたいなと最近考えています。
コロナになってから家で昔のモノクロ映画を見るようになって。50年代、60年代の日本映画で描かれる西洋化の影響を受けた東京の街並みが今とまったく違うのが面白かったんです。ヨーロッパ的な雰囲気なのが好きなので、そういったものを描いてみたいですね。
山本直孝(YAMAMOTO Naotaka)
1975年福岡県生まれ。九州産業大学芸術学部卒業後、99年よりフリー。主な仕事は企業TV-CM、アパレル広告、本の装幀や絵本、舞台のポスター、雑誌等です。
Vol.2mtアートコンテスト審査委員特別賞居山浩二賞 Vol.3mtアートコンテスト優秀賞受賞。
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