著作権と契約のキホン
改めて知る・考える「著作権と契約のキホン」【第2回】著作権ってどんなもの?
なんとなくは知っていても、やはり難解なイメージが強い「著作権」や「契約」。本連載では、改めてその基本を知ることで、イラストレーター、そして発注者であるデザイナーやクライアントのよりよい関係性、仕事の進め方について考えます。
オオスキトモコさんに聞く 著作権ってどんなもの?
イラストルポを得意とし、「三級知的財産管理技能士」(国家資格)、「ビジネス著作権検定上級」の資格を有するイラストレーター・オオスキトモコさんに、「著作物」と「著作権者」、「著作権」の関係をイラストレーションでわかりやすく説明してもらった。
―「著作物」と「著作権者」、そして「著作権」の関係性は?
―「著作権」って何ですか?
「著作人格権」と「著作財産権」の違い
「著作者人格権」は著作者の人格的利益を守り、「著作財産権」は財産的利益を守るもので、著作物を創作した時点でこの両方の権利が発生します。著作財産権の存続期間は原則として、著作者の死後70年です。
ちなみに、「著作財産権」は他人に譲渡することが可能ですが、著作者の名誉や感情を守るための「著作者人格権」を他人に譲渡することは、たとえ親族であっても不可能です。
そのため、仕事を発注する立場であるクライアントが「著作者人格権」の譲渡や放棄を提案することは権利を侵害する行為ですし、たとえ契約書を締結したとしても、裁判になった際には認められないことも多いでしょう。
ただし、基本的に制作前のアイデア、タッチや作風などは著作権によって保護されるものではないため、適用範囲の判断には注意が必要です(過去のさまざまな判例を見ても、結果は非常に複雑で、一見して納得するには難しいものとなっています)。
(第3回に続く)
執筆・編集:イラストレーション編集部
企画・編集協力・イラストレーション:オオスキトモコ
監修:弁護士 大川宏(総合法律事務所あおぞら)
図版デザイン:尾崎行欧+宗藤朱音(尾崎行欧デザイン事務所)
*イラストレーターの仕事を主眼として、弁護士の監修、参考資料、これまでの事例などに基付き一般的と思われる法解釈によって構成していますが、本情報の運用結果については玄光社及び関係者共にいかなる責任も負いかねます。
*本特集は『イラストレーション』No.236掲載記事を再構成し、2024年6月12日にウェブ公開したものです。
【プロフィール】
オオスキトモコ
イラストレーター。2010年から『イラストレーションファイル』毎年掲載。仕事をする中でさまざまなトラブルに遭遇したことから、下請法や著作権法など法律の勉強を始める。2021年に国家資格「三級知的財産管理技能士」、2024年に「ビジネス著作権検定上級」合格。
大川宏(総合法律事務所あおぞら)
弁護士。得意分野は民事事件、イラストレーターの著作権関連など。『Q&Aでわかる!イラストレーターのビジネス知識』(玄光社)監修。教育機関で著作権の講義なども行っている。
【特集参考文献一覧】
ウェブサイト
● 公正取引委員会
● 公正取引委員会
「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック コンテンツ取引と下請法」
● 公正取引委員会
● 特許庁
●厚生労働省 ※策定:内閣官房+公正取引委員会+中小企業庁+厚生労働省
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン【概要版】」
● 公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)
● 一般社団法人日本モデルエージェンシー協会(J.M.A.A)
オンラインセミナー
●日本イラストレーション協会(JILLA)
講師:弁護士 桑野雄一郎(高樹町法律事務所)
書籍・雑誌
●『illustration』No.168特集「イラストレーターのためのお仕事マナーQ&A 文書確認編」
大川宏 監修協力(玄光社)
●『プロとして知りたいこと全部。イラストレーターの仕事がわかる本』
グラフィック社編集部+竹永絵里 編(グラフィック社)
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