著作権と契約のキホン
改めて知る・考える「著作権と契約のキホン」【第4回】仕事を受ける前に確認すべきこと
なんとなくは知っていても、やはり難解なイメージが強い「著作権」や「契約」。本連載では、改めてその基本を知ることで、イラストレーター、そして発注者であるデザイナーやクライアントのよりよい関係性、仕事の進め方について考えます。
オオスキトモコさんに聞く 仕事を受ける前に確認すべきこと
オオスキさんが日頃から使用している確認書をもとに、依頼を受ける際、契約を結ぶ際にチェックすべき項目をまとめました。
【確認書の内容】
(1)記入日
(2)発注者情報 [氏名〈担当者名〉/会社名・部署名/会社住所/会社電話番号/メールアドレス]
(3)クライアント名[および発注者名]
(4)媒体タイトル(または企画名や記事名)
(5)使用媒体
(6)使用期間
(7)使用地域
(8)発行部数
(9)媒体サイズ
(10)業務内容
(11)データ形式/点数
(12)色[4C・2C・1C/RGB・CMYK]
(13)原稿料/流用または電子利用内容/料金内訳
(14)流用・電子利用の有無
(15)原稿料合計[請求額合計]
(16)原稿料支払日・振込口座
(17)請求書の提出方法
(18)作品締切日[ラフ/本番原稿/検査日]
(19)作品受け渡し方法
(20)納品後の公表・使用可能な範囲について
(21)特記事項、その他
□発注者は暴力団関係者、その他いわゆる反社会的団体などの関係者ではありません。
□発注者は上記に違反した場合に、本契約を解除されても異議を述べません。また、損害賠償責任を負担します。
(22)著作権者[著作権者名/記入日/住所/電話番号/メールアドレス]
(23)注意事項
◆著作権はイラストレーターが保有しています。特記ない場合、1号・1媒体・各1回のみのご使用料金です。この書面に定めのない作品の使用・二次使用・流用・改変などは、イラストレーターにご相談ください。
◆イラストレーターは著作者人格権を行使出来ます。デザイン上で必要な範囲でのイラストレーションの色の変更や改変については、承諾します。
(24)注意事項
◆イラストレーション納品後に、その使用が見送られた場合にも料金が発生します。ラフまでなど、制作途中であってもその進行状況に応じて代金が発生いたします。
(25)注意事項
◆作業終了後は、原稿及び複写・データをイラストレーターにご返却ください(オンライン納品のデータは除く)。
◆印刷物などが仕上がりましたら、見本をイラストレーターにお渡しください。ウェブ上に公開された場合や電子書籍はそのURLをお知らせください。
―取引する相手は誰だろう?
Check1:取引先の基本情報
確認書(上記画像参照)の(1)記入日、(2)発注者情報[氏名〈担当者名〉/会社名・部署名/会社住所/会社電話番号/メールアドレス]、(3)クライアント名[および発注者名]、(4)媒体タイトル(または企画名や記事名)、(21)特記事項、その他[「発注者は暴力団関係者、その他いわゆる反社会的団体などの関係者ではありません。」「発注者は上記に違反した場合に、本契約を解除されても異議を述べません。また、損害賠償責任を負担します。」]は取引相手の情報を確認する項目です。相手が誰なのか、身元がはっきりしている人、安心して取引が出来る企業なのかなどを、 しっかり確認しましょう。
―報酬は何に対していくらもらえる?
Check2:お金や自分の権利のこと
(5)使用媒体、(6)使用期間、(7)使用地域、(8)発行部数、(9)媒体サイズ、(10)業務内容、(11)データ形式/点数、(12)色[4C・2C・1C/RGB・CMYK]、(13)原稿料/流用または電子利用内容/料金内訳、(14)流用・電子利用の有無、(15)原稿料合計[請求額合計]、(20)納品後の公表・使用可能な範囲について、(22)著作権者[著作権者名/記入日/住所/電話番号/メールアドレス]、(23)注意事項[「著作権はイラストレーターが保有しています。特記ない場合、1号・1媒体・各1回のみのご使用料金です。この書面に定めのない作品の使用・二次使用・流用・改変などは、イラストレーターにご相談ください。」「イラストレーターは著作者人格権を行使出来ます。デザイン上で必要な範囲でのイラストレーションの色の変更や改変については、承諾します。」]、(24)注意事項[「イラストレーション納品後に、その使用が見送られた場合にも料金が発生します。ラフまでなど、制作途中であってもその進行状況に応じて代金が発生いたします。」]は、ギャランティが妥当か検討するための項目です。納期が短い、仕事実績として公開する権利が制限されるなど不利益な条件がある場合は増額交渉も1つの手です。(16)原稿料支払日・振込口座、(17)請求書の提出方法は請求、先方の支払い時に必要な項目です。
―自分に出来る依頼内容かな?
Check3:作業に関係すること
(9)媒体サイズ、(10)業務内容、(11)データ形式/点数、(12)色[4C・2C・1C/RGB・CMYK]は、イラストレーション制作に必要な情報を確認するための項目です。(18)作品締切日[ラフ/本番原稿/検査日]はスケジュール、(19)作品受け渡し方法は納品方法、(25)注意事項[「作業終了後は、原稿及び複写・データをイラストレーターにご返却ください(オンライン納品のデータは除く)。」「印刷物などが仕上がりましたら、見本をイラストレーターにお渡しください。ウェブ上に公開された場合や電子書籍はそのURLをお知らせください。」]は、原稿や見本の扱いについて確認する項目です。現実的に引き受けられる仕事かどうか、しっかり確認しましょう。
―取引条件は明確?
Check +α:下請法 or 独占禁止法上で必要なこと
(1)記入日、(2)発注者情報[氏名〈担当者名〉/会社名・部署名/会社住所/会社電話番号/メールアドレス]、(3)クライアント名[および発注者名]、(4)媒体タイトル(または企画名や記事名)、(5)使用媒体、(6)使用期間、(7)使用地域、(8)発行部数、(9)媒体サイズ、(10)業務内容、(11)データ形式/点数、(12)色[4C・2C・1C/RGB・CMYK]、(13)原稿料/流用または電子利用内容/料金内訳、(14)流用・電子利用の有無、(15)原稿料合計[請求額合計]、(16)原稿料支払日・振込口座、(18)作品締切日[ラフ/本番原稿/検査日]、(19)作品受け渡し方法、(20)納品後の公表・使用可能な範囲について、(22)著作権者[著作権者名/記入日/住所/電話番号/メールアドレス]、(23)注意事項[「著作権はイラストレーターが保有しています。特記ない場合、1号・1媒体・各1回のみのご使用料金です。この書面に定めのない作品の使用・二次使用・流用・改変などは、イラストレーターにご相談ください。」「イラストレーターは著作者人格権を行使出来ます。デザイン上で必要な範囲でのイラストレーションの色の変更や改変については、承諾します。」]、(24)注意事項[「イラストレーション納品後に、その使用が見送られた場合にも料金が発生します。ラフまでなど、制作途中であってもその進行状況に応じて代金が発生いたします。」]は、下請法(詳細は第6回・参照)に該当する取引の場合、本来は発注者側が「親事業者の義務」として書面を作成し、イラストレーターに交付すべき項目です。
2024年11月1日施行予定の「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」(詳細は第6回・参照)施行後は、フリーランス新法の対象となるすべての発注事業者に「書面等による取引条件の明示」の義務が課されますが、今回はイラストレーターが確認用の書面を作成するケースを想定しています。書面の作成時点で決まっていないことがある場合は、未定の理由と、未定の事項が決定する予定期日を特記事項に記載しましょう。
―相手には何を伝える?
Check+α:自分の情報
(22)著作権者[著作権者名/記入日/住所/電話番号/メールアドレス]は著作権者が自分であること、またその連絡先を相手に伝える項目です。取引先の基本情報と同様、氏名や住所、電話番号やメールアドレスなどを記入しましょう。
*フリーランス新法施行後は、発注者側が(1)〜(16)、(18)、(19)、(22)、(23)の項目を明示することが必要となります。この記事ではイラストレーターが確認用の書面を作成するケースを想定しています。
*実際にイラストレーターが使用している確認書・契約書見本を、第13回でご紹介しています。
→ 確認・検討した上で、すべて納得出来たら、契約!
(第5回に続く)
執筆・編集:イラストレーション編集部
企画・編集協力・イラストレーション:オオスキトモコ
監修:弁護士 大川宏(総合法律事務所あおぞら)
図版デザイン:尾崎行欧+宗藤朱音(尾崎行欧デザイン事務所)
*イラストレーターの仕事を主眼として、弁護士の監修、参考資料、これまでの事例などに基付き一般的と思われる法解釈によって構成していますが、本情報の運用結果については玄光社及び関係者共にいかなる責任も負いかねます。
*本特集は『イラストレーション』No.236掲載記事を再構成し、2024年6月24日にウェブ公開したものです。
【プロフィール】
オオスキトモコ
イラストレーター。2010年から『イラストレーションファイル』毎年掲載。仕事をする中でさまざまなトラブルに遭遇したことから、下請法や著作権法など法律の勉強を始める。2021年に国家資格「三級知的財産管理技能士」、2024年に「ビジネス著作権検定上級」合格。
大川宏(総合法律事務所あおぞら)
弁護士。得意分野は民事事件、イラストレーターの著作権関連など。『Q&Aでわかる!イラストレーターのビジネス知識』(玄光社)監修。教育機関で著作権の講義なども行っている。
【特集参考文献一覧】
ウェブサイト
● 公正取引委員会
● 公正取引委員会
「下請代金支払遅延等防止法ガイドブック コンテンツ取引と下請法」
● 公正取引委員会
● 特許庁
●厚生労働省 ※策定:内閣官房+公正取引委員会+中小企業庁+厚生労働省
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン【概要版】」
● 公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)
● 一般社団法人日本モデルエージェンシー協会(J.M.A.A)「出演と契約に関するガイドライン」
オンラインセミナー
●日本イラストレーション協会(JILLA)
講師:弁護士 桑野雄一郎(高樹町法律事務所)
書籍・雑誌
●『illustration』No.168特集「イラストレーターのためのお仕事マナーQ&A 文書確認編」
大川宏 監修協力(玄光社)
●『プロとして知りたいこと全部。イラストレーターの仕事がわかる本』
グラフィック社編集部+竹永絵里 編(グラフィック社)
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